先日、オッスオッス言ってる友人にオス勧めされたエロゲ「Sense Off」をプレイしてからというもの、一昔前のノベルゲーに触れたくて仕方ない期が再びきたのでDLsiteのセールを物色していました。今もしています。基本的にDLsiteやFANZAは間を置かず物色するものです。
※「Sense Off ~a sacred story in the wind~」10年ぶりに再会した幼馴染が毎朝起こしに来てくれるゲーム。
時代を感じるテキストは佳いですね。ほんの十年二十年でこんなにも人の語る雰囲気って変わるのかと思い知らされます。さすがに今見るとつまらないなと思えるギャグや展開も、当時だってそう手放しで褒められたものではなかったんだと思いますが、それを受容する雰囲気が支配的だったんだろうなと想像するのが楽しくもあります。
新しいものはより洗練されたもの、より進んだ技術の賜物だと理解されがちですけど、こういった物語作品は社会情勢や経済状況に基づいた時代ごとの価値観に簡単に左右されますよね。だから一概に新しいものの方が優れているとは言えないワケで……。触れた作品の母数が少ないとそもそも全体を語るに足るような視野を持ちえないのでこれは勿論個人の浅い感想でしかないのですが。
それであの、ちょっと古い作品で、いつも言ってるんですが「カリオストロの城」見るじゃないですか。見るとラストシーン、姫様の従者かなにかの爺さんが去っていくルパン一味を指して「なんと気持ちの良い連中だろう」とかなんとか言うんですよ。僕はアレを見るとどうにも「俺は気持ちの良い連中にはなれない」ってどうしたってガックリきちゃうんですよね。ああいう時代のお話の中の破天荒な活躍をするキャラみたいになれるかって言ったらそりゃあどの時代の人もなれないんですけどね。
似た感じで、向こう見ずで情にもろくておせっかいな主人公像が一般的だった時代はかつて確かにあったんだと思うと、今の自分が失ったか得られなかった何かがこの胸のどこかに隙間を作っている気がして不安定になります。行動力があって自発的に問題解決に取り組んで実際に成功させてしまうようなキャラクターばかりが登場するのを見ると、かたやスマホがあっても美味い飯屋を探すことすらできないような僕ですよ。カス過ぎんか?? そういう話はやめよう。
※「スマホ」 スマートフォン。エッチな画像や動画を見るのに使う。
個人の資質の問題を社会の責任にすり替えたところで、今回はちょっと前のゲームなんかやると時代を感じて良いですよっていう話です。
プライベートナース(Angel Smile)
2001年。かつてキューブリックとアーサーⅭクラークが描いた宇宙旅行の夢は、果たして美少女ナースが玄関をノックして現れるゲームの発売という形で帰結しました。
CG担当の根須魂介氏がpixivに貴重なイラストを数点掲載していますね。要チェックや!
人ひとり成人させるだけの歳月が流れてもまるで色あせない美少女イラストです。
2001年というと、サクラ大戦3、夜が来る!、君が望む永遠、シスプリ……こうしてみると現時点であからさまな古さを感じるようなラインナップではありませんね。
~プライベートナース・イントロダクション~
病弱ながらも、幼なじみの彩乃と学生生活を送っていた主人公、力道 広樹。
そんな彼の家に、突然訪れた『プライベートナース』のまりあ。
広樹の母から彼の治療を依頼されたまりあは、広樹の治療をする為にやってきたのだった。
その期間は一ヶ月……彼女は、広樹の家に住み込むと言った。
自由気ままな生活を信条とする広樹は、そんなまりあを拒絶する。
だがどんなに断っても、まりあは広樹の元を離れようとはしない。
そんなまりあに、広樹は条件付きでの採用を認めた。
その条件とは、一週間以内に、広樹の気持ちを変え、治療したいと思わせる事。
まりあは笑顔で、その条件に頷くのだった。
そんな広樹を複雑な顔で見つめる、幼なじみの彩乃。
こうして、3人の新しい日々が始まるのだった……
〈DLsite作品紹介より〉
はい。ここまでがゲーム内プロローグまでの内容です。こんなの書いておいてナンですが、僕もここまでしか知りません。プレイしてるんじゃないのかって? してますよ! 立ち絵が切り替わるだけで黄色い声上げながら!! エロゲ・ギャルゲを楽しむスタンスとしては「画面に可愛い女の子がいる!」という加点から入りたいので、テキストに難ありだなとか、しょーもないパロネタだなとかそういう部分は最後にまとめて減点みたいな形式で遊んでます。
ともあれそんな様子なので、立ち絵がかわいい声がかわいいっていうだけで満足しちゃって先を読み進められず、結果プロローグ終えて一日目の朝から先に進めてません。特にその朝に幼馴染の彩乃(こおろぎさとみ)から発せられるセリフにドハマりしてシナリオ的に一歩も動けなくなっています。そこだけ紹介させてください。
順を追って問題のシーンを見て行こう。
多くの物語がそうであるように、はじまりは主人公の目覚める朝からです。

扉を猛ノックする音。

幼馴染の少女、彩乃登場。(かわいいな……)
毎朝迎えに来てくれるようです。


恒例のジャンケン勝負。主人公が勝てば徒歩通学、負ければ彩乃がスクーターのケツに乗せてくれます。未プレイなので憶測ですが、本当は体の弱い主人公を毎回スクーターに乗せたいのでしょうが、男らしさにこだわる主人公に譲歩する形で勝負する取り決めになったのではないでしょうか。
それにしても立ち絵がかわいい。

たかがジャンケンですがとても楽しそうです。(かわよ……)

遅刻寸前なので走って間に合わせようとする主人公を心配する彩乃。(かわ……)

案の定倒れる主人公。また、知ってる天井だ……。
目が覚めるとそこは既に放課後の保健室。一日ムダにしたね。ヒロちゃん。

彩乃は一度帰宅してスクーターで再度学校に来てくれていたらしい。こういう優しい娘を普段から邪険にするのは鈍感系主人公の許せないところの一つです。

これは!?
「いつもすまないねェ構文」だ!!
※「いつもすまないねェ……」「それは言わない約束でしょ」という掛け合いのコンボを決めるとヒモが喜ぶ遊び。マジで普段いつもやってる。運命を感じる。

送ってくれてサヨナラかと思ったら家に付いてきてくれる。面倒見が良すぎる。
デュフフ……彩乃ちゃん……これからはおばさんじゃなくてお義母さんになるんだよ!

そこへ再びドアをノックする音が。扉を開くと……。
「入ってきちまったじゃねえか……」

出稼ぎに出てる母親が手配したナースが閑静な住宅街に登場。
住み込みでお世話してくれるんですか!?
邪魔邪魔! 一人暮らしの男には色々あるんですよ!

降って涌いた美少女の乱入に困惑しながらも、主人公の身体の為になるならとナースを置くことを勧める彩乃。
しかしあんなイカれた女は追い出す、お前を頼りにしているという主人公の言葉に声色が明るくなる。ここの「……本当?」はすごく細かい機微が現れていますよ。必聴。

出て行ってくれと言おうとした矢先。
あーっ!! そんな距離の詰め方されたら好きになっちゃうーーっ!!

勝手にルールを作ってジャッジを下す立場に回り主導権を握る。
GTAオンラインでクソバカキッズに絡まれたときの対処法です。

そして翌朝、まりあの用意した朝食を味わう。
最近も行けよ! 朴念仁!
食後に野菜ジュースを飲んで終了。
主人公は処方された薬をきちんと飲んでいないようです。だから具合悪いんじゃないの?

お出かけ前の検温。

あっ。

怒って一人で先に行ってしまう彩乃を追いかけます。

恒例のジャンケン勝負はどうなる。

めっちゃ怒ってる……。

ん゛ッ!!

デコつけただけだから未遂じゃ!と弁解する主人公。

お前なんであの女とはくっついてワタシとは出来んのじゃ!

「そういえば」で繋げられるような流れではないところを少し強引に行きます。
内心まったく穏やかじゃないですね。
ここの機微で満足して先に進めたくなくなるのが僕にとってのプライベートナースです。
ここから二人のヒロインとのドキドキの三角関係が始まるのか、あっさりと個別ルートに進んでどちらかの存在感が空気になっていくのかは定かではありませんが、ともあれプライベートナースの世界が動き出します。
ここからは「ワタシとするのはジャンケンで、あの子とするのは……キスなんだ!」 の何がどう良いのか褒めたいと思います。
こおろぎの演技が素晴らしいとか色々挙げるところはあるのですが、まず一点。
このセリフが単体で完成していて前後の文脈を必要としないところです。
このセリフだけで伝えられる情報が非常に味わい深く豊かで、これを種として枝葉を伸ばすように物語を紡いで行ける可能性に満ちています。
前段で紹介したストーリーの流れはいったん忘れて、このセリフだけから状況を想像していきましょう。
まず登場人物は三人。「ワタシ」「あの子」「話しかけられている人物」です。言いづらいので最後のは主人公と言いましょう。この世界にはワタシ、あの子、主人公の三人しかいません。
まずは三人の関係性を推測しましょう。ワタシと主人公はジャンケンをする間柄です。これはとても深い付き合いを意味します。ジャンケンは多くの場合なにかを奪いあう時に行う勝負です。多少の知り合い程度の関係性では争いは発生しません。譲り合って終わりです。日常的に小さな争いが発生しても禍根を残さない、じゃれ合いが出来る程度の関係性を構築出来ているのでしょう。
ワタシと主人公が親密な一方で、あの子とはどうでしょう。ワタシはあの子を名前では呼びません。話したこともないのか、名前も呼びたくないほど嫌っているのか、友達だったのがこの瞬間敵に変わったのか。少なくとも親密さでいえばほぼゼロからマイナス方向への揺らぎがあります。
そんなあの子と主人公がキスをした。ワタシにとっては到底許せることではありません。
ワタシは激高してその感情のままに主人公に食って掛かります。身勝手でともすればみっともない、むき出しのマイナス感情をそのままぶつけることの出来る程の精神的な距離の近さが示されています。
オタクは関係性を喰って生きるものだという論調もありますが、ここまで読んでくれたあなたにはこのセリフから広がる豊かなシチュエーションを感じてもらえたかと思います。
セリフ単体での完成度を高めている要因として、音数の対称性があることも重要です。
ワタシとするのは、あの子とするのは、8音。ジャンケンで、キスなんだ、5音。
「のは」ってほぼ一音みたいなところあるし、7575、都都逸もどきの何かの調子が出てきます。
俳句や短歌が制限された音数で世界の広がりや複雑な心情を想起させるように、このセリフもまた三角関係の妙を最大限に表していると言えるでしょう。
では実際のセリフとしてどう演技されているかですが、これはもう何度も聴いてもらった方が早いと思いますがなるべく言語化していきましょう。
「ワタシとするのはジャンケンで、あの子とするのは――(ハァ)キスなんだ……」
こおろぎさとみの演技を文字にするとちょっとディテールが違いますね。
特にキスなんだ、の前に一瞬ハッと息をのむ演技が入ります。その後に落胆するようにキスなんだ……と続きます。
怒り心頭、血が上った頭で「ワタシとするのはジャンケンで、あの子とするのは――」まで一気にまくしたてます。そこで突然ブレーキがかかり言葉の勢いが削がれます。あの子とするのは……キスですね。
目撃したキス現場が脳裏をよぎったのか、はたまた今現在はっきりと恋人関係ではない幼馴染を問い詰める正当性のなさに自己嫌悪したのか、いろいろな負の感情がないまぜになったように急にトーンダウンしてからの「キスなんだ……」です。つい昨日までは二人でジャンケンしてるだけであんなに楽しそうにしていた彩乃が、幼馴染と自分以外の女とのキスを目の当たりにして心をざわつかせている。ジャンケンなんかして笑って、このヌルい関係に安心して、まるっきり馬鹿みたいじゃない。
僕はこの(ハァ)という演技に「女の子が傷ついた瞬間」を見た気がします。もっと傷つくところ見せろ……!! 声優こおろぎさとみの確かな力量というものを見せつけられた感じがあります。ありがとう……。
人はその人生のなかで三度、声優にボコボコにされて死ぬと言われています。沢城で一度、麻里奈のヒス声で二度、堀江由衣にはだいたい負けこして三度、アマガミの各ヒロインで九度、こおろぎで十度……人は声優とまみえる度にボコされて死ぬと言われています。
どうせ死ぬならこおろぎの幼馴染で死ぬのもいいのではないでしょうか。では。
プライベートナース(Angel Smile)
セールで500JPYです。買って遊んで死んでください。
コメント